奏でる音、ルックス、全てがハイクラス。
新世代の超高音質イヤホンブランド [エニューム]

INTERVIEW「n+um(エニューム)」開発秘話

兄弟という絶大な信頼と絆があったからこそ、
お互いのこだわりをぶつけ合える事ができた。
2017年に誕生したn+um(エニューム)。ブランディングと販売を受け持つ(株)ネディア代表の渡部嘉文氏と超高音質技術の開発者であるオーツェイド(株)代表の渡部嘉之氏がn+um(エニューム)の開発過程やその魅力について語った。

セラミックススピーカー開発の経験から
たどり着いた高品質イヤホン

まず、ネディア渡部社長にお聞きしたいのですが、IT事業を展開しているネディアで、まったく別事業であるイヤホンの製造・販売を決めたのはなぜですか?
ネディア
渡部社長
私の兄が特殊なセラミック技術を使ったスピーカーの開発をしているという話を前々から聞いていました。そこで少し興味を持っていたのですが、正直ネディアとしてブランドを立ち上げて、製造販売するのはどうかな?と半信半疑でした。
ところが、ある日兄がサンプルのイヤホンを持ってきて、音を聞いた時に「これはイケる!」と何故か確信めいたものがありました。今までこれほどまでに繊細でかつ臨場感のあるイヤホンを聞いたことがなかったのです。その後、n+um(エニューム)のプロトタイプが出来てきた時はさらに音・カタチともに洗練されてきていて、今回の製品化に至った次第です。
私自身、イヤホンの技術的なことは詳しくなかったのですが、耳や脳は正直でした。また、まだ世に出ていない兄の特許技術を使った良いものを世の中に出したいという気持ちもありました。
では、n+um(エニューム)開発のきっかけを教えてください。
オーツェイド
渡部社長
私はもともと、電子部品関連の企業でセラミックスピーカーの開発に携わってきました。積層型セラミックスピーカーを世界で最初に市場に送り出し、新しい市場を作ったことは私自身の大きな経験になっています。しかしながらセラミックスピーカーは低音域の再生があまり得意ではないという弱点があり、より質の高い音をつくるにはどうしたらよいかについては答えを出せないまま会社を退職することになりました。
しかし、退職後に厚意にして頂いた前職の部長さんの紹介で高性能イヤホンの開発プロジェクトに社外から特別に参画させて頂いたとき、セラミックスピーカーの生きる道をはっきりと感じることが出来たのです。やがてそのプロジェクトも終わり今も昔の仲間達がイヤホンの事業化に勤しんでいると聞きます。
その後私は起業し圧電セラミックのコンサルタント業を始めました。その間も高性能イヤホンの開発を独自に進め、自分なりに納得のいくプロトタイプにたどり着きました。当時はエンジニア根性よろしく、それをビジネスにどうするかなど考えてもおらず自己満足で終わる予定でしたが、(株)ネディアで社長を勤める弟に自慢話半分で聞かせたところ「これはすごい!」という話になり、是非ネディアで製品販売をしたいとの依頼を受けたのです。兄弟ながらまじめに話す弟の熱意は感じることが出来ましたし、何よりも自分の作品をこれほど認めてくれた人間も初めてだったので、私の技術と弟の売りのセンスが融合して「共同開発」が始まったのです。

「持つ喜び」と「聴く喜び」を満たす製品をめざした

n+um(エニューム)のコンセプトは?
ネディア
渡部社長
「聴く喜び」と「持つ喜び」の両方を満たすことをコンセプトにしました。趣味を極め、余暇を楽しむための大人のための最高のアイテムにしたいというのが私の考えです。高品質な音のイヤホンを作るのは兄の技術力を信じました。そしてその音に「匠の技」をブレンドすることを依頼しました。大人が持つ日本ブランドとしての嗜好品。それにふさわしい製品こそがn+um(エニューム)を持つユーザーの音の羅針盤になってくれると信じています。
オーツェイド
渡部社長
最初のプロトタイプは海外製でした。弟から「聴く喜び」と「持つ喜び」のコンセプトを聞いたとき、日本での生産を前向きに考えるようになりました。「匠の技」に原点を合わせました。出来るだけ無駄な振動を抑えるために無垢のステンレス材を用い、それをさらに振動を抑制する形状に加工する。いくつか仲の良い加工業者に試作を依頼しましたが、コストと出来映えの問題はいつも開発の速度を鈍化させました。そして私の知人から紹介してもらった桐生市のとある製作所の社長がその答えを出してくれました。社長は製品のコンセプトとモノを作ることへの私のこだわりを理解してくださり、何度も何度もテスト試作を行ってくださいました。そしてまさに匠の技にふさわしい筐体が完成したのです。生産能力は一日に30台のみ。それほどに手をかけた「持つ喜び」にふさわしい工業製品なのです。

人間の耳には聞こえない、
高い周波数の音を聞かせる

写真:オーツェイド社のハイレゾ対応音響評価装置

n+um(エニューム)の特徴を教えて下さい。
オーツェイド
渡部社長
人間は、超音波とよばれる20kHz以上の周波数の音を聞くことができません。そのためCDには20kHzまでの音しか入っていません。しかしながらそれは人間が勝手に決めた規格の意味しかなく、この地球上には我々人間には聞こえないけれど存在している音が無数にあります。
その「聞こえない音」をイヤホンで効率的に再生するために独自開発したのが、特許を取得したセラミックツイータVST(Vertical Support Tweeter)です。セラミック発音体は魚群探知機や潜水艦にも利用されるなど超音波の発音体として非常に適しています。そのようなセラミックの強みを生かして、かつオーディオの音として美しく再生することがこの製品の目的です。
とはいっても、セラミックだけで構成しているわけではありません。低音域の音は通常のイヤホンで使われている電磁式の発音体のほうが適しているので、低音は電磁式、高音はセラミックと2つの発音体を使ったハイブリッド型を採用しています。実際には独自開発したウーハーも相当の高周波数まで再生してくれており、VSTの発生する音の多くは人間の聞こえない音の部分を担当しているのです。不思議なものでこの聞こえない音を聞くと演奏者や演奏している場所の臨場感や息づかいが聞こえてきます。いわば自然なサラウンド効果とでも言うべきです。
また同時に非常に細かな音の粒を感じるのもVSTの特長です。俗に言う「解像度の高い音」がイヤホンから聞こえてくるんですよ。え?こんな音が含まれていたの?と新しい音の発見もきっとあるはずです。

フラットなチューニングで、どんな音楽にも合う

n+um(エニューム)はどのような音楽に向いていますか?
オーツェイド
渡部社長
開発にあたっては、どんなジャンルの音楽でも楽しめる、フラットな音づくりをめざしました。イヤホンは構造上の問題から、低音域・高音域のどちらかに特化した製品のほうが作りやすいんです。しかし、聞く音楽のジャンルによっても、欲しい音域は違いますよね。そのたびにイヤホンを使い分けることを私はあまり好ましいと思っていません。そこで、先ほどお話した20kHz以上の超高音域を出すことと同時に、低音域から高音域までフラットに音を出せるものを作ることにしました。
むろんこのイヤホンはハイレゾ音源の再生も難なくこなせます。しかしながらハイレゾでなければ良さが分からないかというと決してそうではありません。MP3やCDを聴いた場合でも。明らかにその違いと過去に無い音のシャワーを感じていただけるはずです。

職人の匠の技が光る、ステンレス削り出しの筐体

どのような方に利用して頂きたいと考えていますか?
ネディア
渡部社長
もちろん音にこだわりのある方です。兄が述べているように音に対してかなりこだわって作り込んでいますので、音にこだわりのある方は是非一度試して頂きたいです。
また、フラットなチューニングでジャンルを特定しない音作りをしましたので、様々なジャンルの音楽を楽しむ方にも向いているとともに、他のイヤホンを試す際のリファレンス的なポジションで使って頂くのもアリだと思います。
重すぎず軽すぎず絶妙な重量バランスですので、耳に装着した際のつけ心地の良いものをお探しの方にも試して欲しいですね。
そして、他とは違ったモノを身につけて優越感を味わいたい方にもオススメです。特に職人の匠の技で生産されたNUM-E1000は1000個限定生産ですので、プレミアムです(笑)。

兄弟の信頼関係が
あったからこそ、実現できた

オーツェイド代表の兄・渡部嘉之氏(写真右)と
ネディア代表の弟・渡部嘉文氏(写真左)

n+um(エニューム)の製品化が実現した鍵は、どこにあると思いますか?
ネディア
渡部社長
今回、コラボレーションが実現したのは、兄弟としての信頼関係があったからだと思います。兄弟だからお互いを不幸にはしたくありません。だからこそ、嘘はつかないし、常に最高のものを出そうと思えます。悩んだ時にはすぐに相談しますし、駆け引きは一切ありません。共同開発という言葉だけで済ますことのできない、絶大な信頼と絆があったからこそ、最後まで作ってこられたのだと思います。

聴く喜びと、持つ喜びを実感してほしい

n+um(エニューム)のイヤホンの魅力とは?
ネディア
渡部社長
n+um(エニューム)は、音楽を聞くことはもちろん、所有すること自体にも喜びを感じられるイヤホンです。モバイル市場が拡大してスマートフォンで音楽を聞く人は増えましたが、街の中を見渡してみると、大半の人がスマホ付属のイヤホン使っています。私はn+um(エニューム)をつけていて「彼らとは違うんだ!」という満足感をとても感じました。この喜びを、これからn+um(エニューム)を持つ人にも体験してほしいと思っています。
日本やアジアでは、オーディオは機能が優先されますが、ヨーロッパにはデザインを重視して、オーディオでありながらインテリアとして長く使える製品が数多くあります。n+um(エニューム)も同じように、自分の生活に溶け込んで使い続けられる製品にしていけると感じています。
オーツェイド
渡部社長
電子部品の会社で仕事をしていると、最終製品に携わることはできません。 私自身、最終製品を作ったのは今回が初めてです。できあがったイヤホンを見ていても、「ここは大変だったなぁ」など、1つ1つに本当に思い入れがあります。苦労はしたけれど、エンジニアとしては最高に楽しく夢のある仕事ができました。
ネディア
渡部社長
n+um(エニューム)は有名ブランドをめざしているわけではありません。オンリーワンのこだわりブランドとして、本当にクオリティの高いものを作り続けたいと思っています。小さな会社でも、こだわりを持った製品を作れることを知っていただき、こだわりのある人たちにそれを使っていただきたいと考えています。